望郷の念──。
人は何処に帰りたがっているのだろう。
安息、休息。
息つく間もない日常に世界が霞む。
色褪せた美しい季節が順番を無視してカットインする。
非の昇華
いち方向の都合だけで好都合に展開されるシナリオ──或る向きからすれば、受け入れ難い苦痛となる。
だが、それを継続することによって、その苦痛なりは、いつしか快感へと変化する。
非の昇華。
これを「美学」と呼ぶ。
When You Wish upon a Star
「ひとつだけお願いがある──」
「なぁに?」
「云ったら叶えてくれるかい?」
「聞かなきゃ分からないわ」
「それもそうだね」
「お願いってなぁに?」
「無理矢理、君に優しくしてもいいかい?」
「まぁ…」
餓鬼
欲張りも結構だが、実りある欲を張れ。
闇雲に貪るのは、ただの餓鬼だ。
──故に、満たされない。
清廉潔白
理解されようと躍起になるから擦り抜ける。
「ありの侭」が美しいのは「無垢」な場合のみだ。某かに汚染されたものに真のありの侭など有り得ない。
願わくば、君よ。穢れる事勿れ。
先付けでも後付けでも構わない。
威風凛々と清廉潔白たれ──。
通過儀礼 - ボーダレス・ゲート
「ボーダレスと云うボーダーを潜り抜けるゲート」
師が静かに宣う。
「これは『通過儀礼』なのだ。誰もが通り過ぎる」
「誰もが?」
「少なくとも私の知り得る限りは」
それを聞いた少年は苦笑した。
「成人式と同等って訳だ?」
「そうだ」
少年はひと呼吸置いてから吐き捨てた。
「横断幕引き裂くくらいが関の山さ」
師は微笑を浮かべる。