脇腹を抉られた銀狼は非道く衰弱していた。
糧を得るためとは云え、余りにも酷使した。
糧を得る戦闘能力の低下──。
あからさまに衰弱が見て取れるが…
それでも、休息は赦されない。
闘い続けることこそが彼の定め。
上には上が居る。
或いは、魑魅魍魎の類い──かも知れない。
──どうやら、まだまだのようだ。
まだまだ、昇らねばならない。
途中で降りることは赦されない。
痩せこけた体躯を引き摺り、
蒼白の瞳に紅蓮の焔を宿し、
未だ見ぬ頂き目指して──。
覚束無い足取りでも構わない。
ゆらゆらと揺らめいていても…
──昇り詰めよ。見定めよ。
その光景を眼下に灼き憑けよ。
鋭く研げ。鋭利な刃物のように。
その爪を、その牙を──。
狼の背中に翼は生えていない。
飛翔することは決して叶わない。
だが、銀狼の翼は、
闇にある銀の鼓動を絶やさず、
静寂の中で魂を織り続け、
決して折れることはない。
性懲りもなく、飽き足らず、
全うせよ──。
いつか吹く、
有頂天の風を、満身で受け止めよ。
虚を食め──。
虚を食みつつ、咆哮せよ。
恍惚に恋い焦がれ、咆哮せよ。
精魂枯れ果てるまで魂の咆哮を──。
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スピリチュアル・スプラッタ
血飛沫を撒き散らしても、血痕は残らない。
非現実な内面宇宙に、その残骸が刻まれる。
計り知れない痛みは計れない。
図らずとも計るな。謀るな。
決して計れるものではない。
軒並み、吐かれるだけだ。
慮れば、それだけで良い。
推して知るべし。
真相は闇の中。深層は井戸の底。
水脈が眠っているとは限らない。