2007年6月 アーカイブ[17]

掛け替え

代替えはない。
代用品もない。

「代」と云う文字のゲシュタルト崩壊にも似た感覚に苛まれる。

「代」って何──?
「伐採」の「伐」の字が浮かぶ。

1画足されるだけで意義根底が覆る。
漢字は面白い。


「代表」と云う言葉が浮かぶ。

何のオモテ──?
「代」のオモテさ。
「代」って何──?

メビウスチェーンリングが浮かぶ。


僕は掛け替えのない僕の代表だ。

我が魂の命ずるままに──。

___ spelt by vincent.

tag cloud

天を仰ぎ、流れる雲に憧憬を抱く。

彼らは、どんな変わったフォルム、どんな曖昧な輪郭を晒そうが、誰からも何も干渉されず、お咎めも一切ない。

そんな雲に憧憬を抱くと云うことは、その雲を凌駕する“雲の上”に想いを馳せ、自身とのギャップに圧倒的ブランクを感じ、それを埋められない自身を呪っているのだろう。


「天下の」「一流の」と云う冠群に冷ややかな笑みを浮かべる。同時に「尾張の大うつけ」と云う言葉がリンクする。

乾いた脳内比較演算処理。

自虐的に自身を苛み、貶め、
自慰的に自身を宥め、賺し…

喩えようもなく愚かで陳腐で滑稽だ。

形骸化・形式化された自身の空洞化した空虚な魂の器をみっともなく引き摺る。


ソリッドとリキッドの狭間。固体でも液体でもない──“状態”。「現状」と云う気体のような存在。

真の「心地好さ」を感じられる「状態」「気」「アトモスフィア」──。

そんな“自然”とは空想の世界だけに実存する概念なのだろう。麒麟や鵺、ドラゴンやユニコーン──それら幻獣の類いと何ら変わらない。

何処にも実体はないが、amebicと云う言葉がチラ付く。アメーバ状、ゲル状──。

認識と云うセグメントがそれらを抽出し、無いものの輪郭を「有る」と促しているだけだ。

意識世界と云う色は、何色でも、自由に、器用に、何でも塗り染める。


乾いた風が通り過ぎてゆく。
天を仰ぎ、流れる雲に憧憬を抱く。

___ spelt by vincent.

Whose is this world?

「フンッ。何がそんなに面白いんだか」

カウンターで背中を丸めた男が独り。背後でざわつく他愛もないカップル同士の戯れに毒づく。

「随分、ご機嫌斜めだな」

毒づく男にふらりと細身の優男が近付いた。

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濃度

独りで居る時間が長いと、
濃度が極端に濃密になる。
研ぎ澄まされて純度が高まる。

他者と触れ合う──と云うことは、
それを稀釈しているだけなのかも知れない。

度数の高いアルコールを薄め、
雑事を薄めて愉しむように──。


僕はロック派だ。

馥郁ふくいくとしたフレーバーが
鼻孔を潜り抜けてゆく。


口当たりは sweet
舌の上で転がせば mellow
喉越しは like a fire

___ spelt by vincent.

飽食と怠惰 - マイナスの美学

「満ち足りる」と云うことは「満足」と云うことだ。

「満足」は「過剰」を欲する。
「過剰」を貪る「餓鬼」のように。

「餓鬼」と云えども、いずれ「飽食」を感じる。
やがて「飽食」は「怠惰」を生む──。

少し足りないくらいで丁度いい。

「怠惰」は「贅肉」を肥やす。
「有益・無益」で括れば「有意義で無駄」。


ふと、そんなスパイラル・クロスを浮かべつつ、微睡んだ闇夜を仰ぐ。

脳細胞繊維と感情繊維、記憶繊維と知識繊維とが、複雑に入り組み絡み合っているようでも、実は驚くほどに単純な螺旋を描いているだけだったりする。

そんなメビウス・リングの中から美しいものだけを抽出する。

「マイナスの美学」──。

というネームプレートがブラ提がっていた。

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売れない俳優

「あなたは手に取るように“身の程知らず”ね」

フルート・グラスのステムを紅く塗られた爪の先で弄びながら出し抜けに女が云う。

「ほう。割りと切れるんだな──」

ロック・グラスの中の氷をカラカラとやりながら男が微笑を浮かべる。

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「〜っぽい」

「日本人っぽくないですよねぇ〜」

スウェーデンでの留学経験があると云っていた帰国子女の科白。何気ない切欠でカウンターの隣りに居合わせたのだが、他愛もない会話をしていたとき、そんなことを云われた。

「や、海外長いからねぃ〜」
「え? 何処居たんですか?」
「アルカトラズだよ」
「え?」

僕にとってはお決まりの科白だ。必ず最後にこう結ぶ。

「飛行機なんぞ鉄の塊ぢゃい」

僕は生まれてこのかた飛行機に乗ったことがない。


昨日今日云われたことではないのだが、冒頭の彼の呟きが不意に想起された。

『〜っぽい』って、何──?

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浮遊球体制御室

勝手気ままに浮遊しているように見えても、その球体は見えない鎖で繋がれている。

すべての球体を制御・管理しているのは己。
浮遊球体制御室には他に誰も居ない。

無限に拡がるパノラマな部屋。
否、部屋ではない。

辺り一面、水で覆われている。
垣根の無いボーダレスな空間。

無彩色の彩り。

光と、それが生み出す陰翳とでオブジェクトの輪郭を浮かび上がらせる。

トランスルーレントな素材で出来たクリアで硬質な階段。

それらが水面ギリギリの所から幾筋も上空に伸びている。何処に辿り着くのかは見えないが、その階段を登っている人々が何人も見える。水面には、その姿のリフレクションが揺らめいている。

浮遊球体制御室の中央で鎮座しているひとりが、それらの光景を瞑想したまま見詰めている。

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