世界の存在

絶対の定義に当て嵌まるものを新たに拾得した。

それは「世界の存在」である。

世界の存在を説明するためには、非世界の存在が必要だが、世界以外のものは、定義上、何もないとされている。
何故なら、世界とは存在するものすべてを含有しているだからだ。

唯一無二。対を絶した存在──。
よって、世界の存在は「絶対」である。

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God save me

「よく頑張ったね」

彼が優しい表情を浮かべながら彼女の前に立った。彼女は涙をいっぱい溜めた瞳で彼を見つめた。

「神様が見ていたかどうかは知らないけれど、僕は君を見ていたよ」

その言葉に彼女は感極まった。堰切ったように彼の胸に飛び込むと、瞳いっぱいの涙を溢れさせた。彼がポンポンと頭を撫でる。

「頑張った人にはご褒美が必要だよね」

彼女は怪訝な表情を浮かべながら上目遣いで彼を見上げた。

「プレゼントがあるんだ」

そう云うと、綺麗にラッピングされた小さな箱を取り出し、彼女に手渡した。

「これは…?」
「開けてご覧」

高鳴る胸の鼓動と共にラッピングを解き、箱の中身を取り出すと、彼女は小首を傾げた。

「これは… 何かしら…?」

彼は得意満面な笑顔で答えた。

「眼鏡だよ」
「それは分かるけど… あたし、眼は悪くないわ…」

溜まらず彼が吹き出した。

「そんなことは知ってるよ」
「じゃあ、どうして? 眼鏡を貰っても…」

彼は彼女の唇に人差し指を添えて遮った。

「それは『神様透視眼鏡』だよ。神様が透けてみえるんだ」
「神様透視眼鏡…」

「ああ。それがあれば神様の居処が分かるだろ?」
「居処…」

「居処を突き止めたら文句を云えばいい。どうしてきちんと見てくれないんですか、と」

彼女は穴が空いたように彼を見つめた。


God save me...

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愉快

46年生きてきたが、なかなかどうして不愉快だ。

ただ、これほど生きても尚、不愉快であるということを知り得たことが愉快でならない。
45年しか生きていない者には、この気持ちは分かるまい。

それは、僕もそうだったからだ。


なぜ何もないのではなく、何かがあるのか
出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

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俺様ルール

「簡単な話さ。俺の云うことをみっつだけ利けばいい」
「みっつ」
「こんな簡単な話、ないだろ?」
「それは?」
「従え。平伏せ。奉れ」
「何様だし…」

Not at all.

*2017.09.14・草稿

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無知の特権

無知の特権としては、幸福すら定義できないことにあるが、そうでない者の云う「無知は幸福」とでは些か主旨が違う。

幸福とは、無知でない者の云う無知とは違った領域で──例えば、経験則なりで得た邪魔くさい知見なりを、すべて跳ね除けるだけの破壊力を備えているからだ。

無知≒情報弱者だとすると、情報弱者が幸福なのか、という問いと同等であると考えられるからだ。

要するに、無知は幸福ではない、ということ。

知らなかったがために、享受でき得た待遇なり境遇なり機会なりをみすみす逃してしまう、といったケースは十分にあり得る。

「無知は罪」という言葉もあるくらいだ。私見としては、罪ではなく「罰」のような気がしてならないが、さておき…

知的好奇心の剥離は、知的生産活動の大いなる妨げとなる。無論、対象の興味にも左右されるだろうが、その有無に依存した言及ではない。

知的好奇心そのものをなくしてしまっては、知的生産活動の前に生命活動を維持できないだろう、と云っているだけだ。

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義務と権利考

義務と権利について、精神衛生上の基盤として的確に配置すると、重く垂れ込めた暗雲が一気に晴れ渡るような爽快感を味わえることがある。

「義務と権利考」──である。

「義務」というと、「義務感に駆られて」などが思い浮かび、鬱々としてしまうものだ。

一方、「権利」というと、特に主張することもないのに使わないと何だか勿体ないような錯覚さえ起こしたりする。

法律的には「義務を怠る者は権利を主張できず、権利を主張するなら義務を果たせ」との相互補完を説かれる。

そこで、権利、権利といい気になって浮かれていた部分が諫められ、自身の義務行使についての審議が始まる。やぁ、ゆーほどやってへんかも… 今回は引っ込んどくか…

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【YouTube】Duran Duran - The Wild Boys

Duran Duran - The Wild Boys

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幸せの形

結婚しなくても幸せになれるこの時代に、
私はあなたと結婚したいのです。



ゼクシィのCMで流れたフレーズに微妙な違和感を覚えた。

前時代的な思想で云えば、女性の幸せは結婚が一手に担っていた。そうすることが何よりも幸福である、と信じられていた。

婚期については、クリスマスケーキに擬えられたりもした。24過ぎたら半額セール、等々。

「売れ残り」なんてフレーズは立派なセクハラとして訴えられても可笑しくない時代なのだろう。やぁ、奥歯に物が挟まりやすい時代になったもんやw


男女同権が叫ばれてから久しい昨今において、結婚だけが幸せだとは言い難い時代背景だと云える。

そんな最中、先のフレーズがすんなり入って来ない僕は、些か頭が固くなったのだろうか?

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頬を伝う温かさは何を語るのか

駅のホームへ滑り込んできた電車に乗ろうと、僕は足早に妻と子を追い抜いた。
子は電車好きなのだが、どういう訳だか乗車前に愚図ることがままある。大抵、大した理由もなくそうなるのだが、僕はうんざりした表情を浮かべると、妻が宥めているのを尻目に彼らを置き去りにしたのだった。

ちょうど、車輌が変わるくらいの距離で振り返る。何とか聞き分けて乗車するようだったが、ホームの柱が邪魔で視界が遮られていた。僕は電車を指差し、乗れる? と合図を送った。妻も子も乗るか乗らないか、何とも判断に迷う曖昧な挙動をしていた。

見兼ねて飛び乗った。ドアが閉まる。スルスルと電車が走り出すと、ホームには妻と子の姿が──。何だよ、乗ってねえのかよ… 僕の心の声が届いたのかどうなのか、電車は音もなく停車した。

虚を衝かれたように車内を見渡した。僕以外に乗客はいない。僕が乗った車輌は先頭車輌ではなかったはずなのに前方が見渡せた。何だ、これは…

硝子越しに子の姿が浮かんだ。

「パパ、僕たちは先に行ってるからね。待ってるよ」

そう云うと、スライドの電源が落ちたかのように硝子スクリーンからフェイドアウトした。僕は眼を瞠った。嫌な予感が全身を駆け抜けたからだ。

先に行く? 電車に乗ってないのに? どう考えても可笑しいだろ… それに何だ、あの哀しげな笑顔は… ガキができる表情じゃねえぞ。そう云えば、妻が後ろで膝を折って坐り込んでいたな… ひょっとして──?

僕の忌まわしい思考を掻き消すかのように、誰かが喚いているのが耳に飛び込んできた。我を取り戻すと、駅員と思しき眼鏡を掛けた女性が何事かを伝えてきた。

「大丈夫ですか? 今、緊急停車しましたがお怪我はありませんか?」

多少は揺れたが、そこまで大袈裟なものか? 僕は大丈夫ですよ、と応えた。

「そんなことより、僕の妻と子供を知りませんか? さっきまでホームに居たはずなんですが…」

そう訊くや否や、女性駅員の顔色が曇り僕から視線を背けた。

「それが… 我々も手を尽くしたのですが…」

再び瞠目した。僕の嫌な予感は外れることのほうが少ない。堰切ったようにその場から駆け出した。先程まではわんさといたであろう周囲に人影はない。多分、心情的なものがそうさせているのだろうと高を括り、全身を襲う嫌な予感と格闘していた。

轢死──僕は彼らの死を予感していたのだ。

何処だ、何処に居るんだ、一体…

線路沿いの柵伝いを並走した。乗り越えられそうな、なるべく低い場所を探しながら。途中、腐って落ちそうな柵に当たった。片手で乗り越えようとしたとき、

「そんなところから入っちゃダメですよー」

と声がした。半分、躰が宙に浮いた状態で声のした方向に視線を向けると、僕の子がケタケタと愉快そうに笑っていた。そのまま、ガラガラと崩れ落ちた。

彼らは駅長室と思しき部屋で保護されていた。僕から彼らとの距離は数10メートルといったところか。ゴムボールか何かを蹴って遊んでいる。崩れ落ちたままの僕の目頭には熱いものが込み上げてきた。生きてた。良かった…


──と、ここで目が覚めた。時間にして5分、10分だろうか、否、2、3分かも知れない。最近の睡眠不足が祟ったか、いきなり落ちたのだった。


久しぶりに頬を伝う液体の温かさを感じた。
夢で良かった、本当に──。

___ spelt by vincent.