2006年12月 アーカイブ[3]

永遠の刹那

「何故、あなたはわたしに優しくするの?」
「俺の行動に理由の必要が?」

「あなたのこと、もっと知りたいわ」
「知らないことのほうが多いさ──」

「ふふ。あなたはいつもそんな調子ね」
「そうかい?」

「ええ。可笑しな人だから余計に困るわ」
「きみを困らせるのは本意じゃない」

「じゃ、聞かせて頂戴」
「困ったな」

「困っても許さないわよ?」
「おっかないね」

「逃げるからよ」
「ふふ。逃げる理由なんて要らないさ」

「じゃ、聞かせて頂戴」
「きみを愛しているからさ」

「──」

「宜しいかな?」
「宜しくってよ」

「疑問、すっきり?」
「ええ、すっかり」

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雇用者と被雇用者の特別会議

「どうした? 眠れないのか?」
「ああ。そんなとこだ」

「何故?」
「理由を云えば解決するのか?」

「そう突っ掛かるなよ」
「煙草を喫ってるだけさ」

「何本目だ? 喉のことはお構いなしかよ」
「煙が眼に滲みた言い訳がし易い」

「眼を閉じれば滲みることもないぜ」
「眼を閉じると、浮かぶものは決まってるのさ」

「それは?」
「大事なものだよ──」

「ほう。だったら嬉しいことじゃないか」
「嬉しくなくても人は笑うのさ」

「安心しろ。伝わってるさ」
「どうだかな。俺のアテは当たることのほうが少ない」

「確率の問題じゃない」
「じゃ、何の問題なんだ?」

「魂さ」
「フッ。たまには良いこと云うんだな?」

「ああ。突然変異と天変地異の併せ技みたいなものさ」
「フフ。いいな、お前は」

「何故?」
「眠らなくても存在できる」

「ああ。『魂』だからな」
「違いない」


「余り俺を粗末に扱うなよ?」
「誰が? 俺がか?」

「ああ。磨り減ってしまうぜ」
「企業努力でカバーしろよ」

「それはお前次第だろう? 従業員はお前だけだぜ」
「フフ。酷な経営者だ。それじゃ誰も付いて来ないさ」

「それはお前も知ってるだろう?」
「ああ。だが、逃げられない」


「どうした? まだ、眠れないのか?」
「ああ。眠れない時には無理に眠ろうとはしない。脳天が痺れるまで引っ掻き回すだけさ」

「馬鹿な従業員を持つ経営者の苦悩も汲んで欲しいぜ...」
「フッ。ブラック企業の長が泣き言云うなよ」

「やれやれ。強情な奴だ... ま。好きにするさ」
「流石、話の分かる経営者。助かるよ」

「何かあったら呼んでくれ。何もなくても付き合ってやる、いつでもな」

「滲みるねぃ」

___ spelt by vincent.

虚を食む

「銀狼」

眠らない街の下卑た電飾が黒だかりの森の欲望をくすぐる。雑踏と喧噪──。固く閉ざされたアスファルトから狂った周波数が伝わる。真っ赤に錆び付いたナイフの風を満身に浴びながら彷徨う。

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