2004年9月 アーカイブ[10]

晒せ。解き放て

「晒す」という行為。自虐的な行為。
「云わぬが華」の美徳は地の底に失墜した。

晒すタイミングが晒しどき。

右脳の命じるままに。
思考するのではなく感じよ。
己の内なる true を捉えよ。

己の感じたすべての事象は、余す所なく限りなく真実に近い。


制約や禁止は己が己自身で施錠する、という魂のポテンシャルを封じ込めるための不安全ロック。

「余裕」──精神的なゆとりから多くのものを得られる。


キャパシティに限界があるとするならば、限界を感じる前に、山の中腹辺りをゴールと想定し、最後まで登山し続けることを諦める。


解き放て。

経験を積み重ね、手痛い仕打ちに藻掻きながら、傷つくことから目を逸らさずに。

魂を解き放て。

喉が裂けるほど咆吼せよ。

晒せ。解き放て──。

___ spelt by vincent.

立体交差点

危険な香りをまとった 男だけの酒席にて
胸元に携えた携帯から メール着信音が響く

飛び交う談笑の中 周りを憚りながら覗くと
切ない文字面が 液晶画面に並ぶ

時を見計らって 彼女の元へ
携帯電波の届かぬ 地下の暗がりへ
爆音が鳴り響く 六本木のクラブ

スタンディングバーで ラム・コークを
バースプンに手を伸ばし ライムを搾る
人差し指で氷を転がし 彼女の隣に坐る

 吐息が 重なり合う距離で
 切々と語る 彼女の唇を眺めながら
 時には 視線を絡ませ
 揺れ動く コトバたちを 舐める

ビートに合わせて揺れる 煙草の煙越しに
ダンスフロアで 肢体を くねらせる

笑顔を取り戻した彼女を眺めながら
琥珀色の液体を 胃の腑に流し込む

やがて 閉店を迎え ふたりで散歩
もう自分からは愛さない と窘められ
戸惑いながら 少し面食らう

大きな交差点に差し掛かった

高く聳え立つ ホテルを背に
幾重にも 道路が重なり合う


立体交差点──


ふたり共 地面に坐り込み じゃれ合う
流れるクルマのヘッドライトとテイルランプ
イルミネーションのように ふたりを包む

リングをすべて剥ぎ取られた指に
身軽さと 違和感を覚えながら
モニタ越しに 想いを馳せる──

___ spelt by vincent.

When the wind blow

新たな風が吹く
良い兆しが見える


耐え難い 辛酸苦汁を 舐めながら
ギャップとの葛藤に 苛まれながら
本当の俺は こんなはずじゃないんだ と

なおも 生き恥を晒していて
良かったと思える


計算通りに 事が進むのならば
その方程式を 是非 知りたい

自身では 制御不能な 大きな潮流
翻弄されながら なお潔く受け入れ
敢えて 火中に 飛び込むことで
思いがけない幸運が 迎え入れてくれる


新たな風が吹く
良い兆しが見える

眩しすぎて見えなかったものが
徐々に姿を 現し始めたようだ

心地よい風に この身を 委ねよう

___ spelt by vincent.

メリットとデメリット

過去、俺が若かりし頃、齢で云えば18、9。

上野辺りでバーテンダーだった駆け出しの頃、未成熟な思考と無謀な思惑を胸に抱き、ギラギラとした野望を瞳に宿していた頃。

三十路を過ぎた今となれば、純粋な恋愛観だったことをふと思い出す。

や、今でも十分、純粋だが…

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Sweet little devil

1時間限定の ふたりだけの時間

Agip の MTB を駆り
流れの早い 河を越え
彼女の元へ ひた走る

あちらは クランベリージュース
こちらは ギネスの生ビール

他愛もない話で
屈託なく笑う ふたり
天真爛漫な 彼女の笑顔が
優しく 俺の胸に滲みる

ジャック・ダニエルの
Wロックに切り替えた頃
俺が サングラスを外したのは
そんな彼女への 罪滅ぼし

愉しい時間は 無情なくらい
アッという間に 過ぎてゆく
1時間限定は どこ吹く風ぞ

別れしな 本当は
抱き寄せてしまいたい衝動を
シェイクハンドで 誤魔化した

「またね」

にこやかに 踵を返す
それぞれに 抱えている
現実世界へ 帰ってゆく


途中 流れの見えない
真っ暗な河を凝視し

 このまま 時間が
 止まってしまえばいいのに

と 心の中で呟いた

___ spelt by vincent.