1時間限定の ふたりだけの時間
Agip の MTB を駆り
流れの早い 河を越え
彼女の元へ ひた走る
あちらは クランベリージュース
こちらは ギネスの生ビール
他愛もない話で
屈託なく笑う ふたり
天真爛漫な 彼女の笑顔が
優しく 俺の胸に滲みる
ジャック・ダニエルの
Wロックに切り替えた頃
俺が サングラスを外したのは
そんな彼女への 罪滅ぼし
愉しい時間は 無情なくらい
アッという間に 過ぎてゆく
1時間限定は どこ吹く風ぞ
別れしな 本当は
抱き寄せてしまいたい衝動を
シェイクハンドで 誤魔化した
「またね」
にこやかに 踵を返す
それぞれに 抱えている
現実世界へ 帰ってゆく
途中 流れの見えない
真っ暗な河を凝視し
このまま 時間が
止まってしまえばいいのに
と 心の中で呟いた