追憶 - Past, time goes by

小雨の降り頻る中、薄暗い舗道を歩く。

警笛の鳴らない踏切を越え、いつかふたりで歩いた道をひとり往く。

腹ごしらえにコンビニでおにぎりを買う。
慟哭の矛先となった公衆電話を横目で一瞥。

エレベータのボタン押下。
通い慣れた3階の事務所。
おにぎりの包みをゴミ箱へ放り、Macの電源を入れる。

5月一杯で居を移す事務所。
セブンスターに火を点け、つらつらとキーボードを叩く。

窓の外から雨音を掻き消すように、エキゾーストノートが耳を掠める。

 独りって切ないなぁ…

心の声が誰も居ない事務所を覆う。


想い出は要らない。
望まなくても積み重なってゆくから。
殊更に、想い出作りに勤しむことはない。


紫煙を燻らし、追憶に想いを馳せる──。

___ spelt by vincent.