視界いっぱいに拡がったくすんだ灰色の空から止め処なく降り注ぐ6月の雨雫。
アッシュブリーチされた雲がゆったりと左から右へと千切れて流れてゆく。
水平に貫いた高架では忙しそうに列車が行き交い、高速では大型運搬車が地響きを立てながら赤いテイルランプの尾を引く。
色鮮やかに点滅するライトアップされた観覧車。周囲の配色を無視して楽しそうに踊り廻る。
水溜まりに撥ねる無数の飛沫。音色が喝采に聞こえるのは気の所為か。
慌しく入り乱れる波紋を眺めながら銀狼は紫煙を燻らす。
*2008/06/29 臨海隔離施設にて