2019年7月 アーカイブ[1]

銀色の匙

コーヒーに砂糖を入れていた僕はティースプーンを必要としていたが、今ではブラックだ。

「コーヒーに砂糖入れるんですね。何かイメージと違いました」

とある後輩にそう云われたのを切欠にブラックに転向したのだが、なる程旨い。コーヒー本来の旨さは砂糖を足したのでは決して分からないのだろう。苦味や香りの違いが顕著だ。喫茶店でバイトをしていた経緯もあり、よく知った香りのはずなのだが、僕は今まで何を飲んでいたのだろうか、そんなことを再認識させてくれた。

 なにも足さない。なにも引かない。

ウイスキー広告のキャッチコピーにこんなフレーズがあったことを思い出す。ジャックダニエルをロックで飲む僕がコーヒーには砂糖を入れる。なる程、彼の緩やかな指摘は整合面からすると的確なのかも知れない。流石はデバッガーさん。観点が鋭角だ。

彼のイメージ通りに生き仰せられるかには自信がないが、一緒にいるときくらい、なけなしの幻影を追わせてやってもバチは当たるまい。あちらに看破されなければ、こちらの思惑は配慮として空気に溶ける。


サントリー ピュアモルトウイスキー 山崎

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