美食家と悪食家

美食家と悪食家の会食。

脇目も振らず頬張る悪食家を見遣り、行列には決して並ばない美食家が云った。

「何処で何を喰うかより、誰と一緒に喰うかが問題だ」

悪食家が片眉を上げる。おもむろにナプキンで口許を拭うと、悪戯っぽく囁いた。

「何処で誰を喰うかより、何と一緒に喰うかが問題だ」

美食家の食指が一瞬止まる。

「成る程。面白い」

口許には冷淡な笑みが浮かんだが、笑みが解けると、やがて糧が運ばれた。

咀嚼そしゃくとは、ひと筋縄ではうまくない。

___ spelt by vincent.