その1
嘘をついてはいけないと云うのは嘘である。
その2
正直者は馬鹿を見る、と云うことを信じて疑わない狡猾な詐欺師。
「秘密を打ち明けたい」
「秘密?」
「ああ。信頼している人にしか教えたくないんだ」
「そうか。僕は君の味方だ。何でも話してくれよ」
そう云うと、彼は曇りのない澄み切った瞳を見せた。覚悟を決めたように頷くと、少年が彼に耳打ちした。
「僕は誰も信じていないんだ」
少年の秘密を知った彼の瞳に髑髏が浮かぶ。
記録を更新することより記憶を更新することのほうが難しい。