雷鳴を轟かせ、激しい雨が容赦なくアスファルトを叩きのめす。
駅の改札口に黒山の人だかり。傘を持っている人ですら二の足を踏んでいた。
俺はD&Gの野球帽を目深に被り直し、傘も差さずに飛び出した。
ゴツゴツと野球帽を打ちつける。2、3歩歩いただけで全身がズブ濡れになった。
歩きながらポケットからセブンスターを取り出し一本咥えた。ジッポライターを取り出し徐に点火。
ほうと短く煙を吐くと、煙まで地面に叩きつけられるような勢い。目立つ水溜まりを避けながら足下を見つめて歩いた。
水溜まりにはネオンやクルマのヘッドライトが乱反射する。
しばらくして帽子を脱いだ。たっぷりと水を含んだスポンジのように重い。帽子を左手でブラブラと持った。
帽子を脱いだ頭に土砂降りの雨が勢いよく降り立つ。2月末日に砕いた頭蓋の傷跡に滲みる。
「雨降って地固まる」
アスファルトで固く舗装された地面でも、果たして、より一層固まるのだろうか?
蹌踉めいた頭脳が眠る頭蓋に受ければ、地は固まるのだろうか?
叩きつける雷雨を全身に浴びながら家路を急いだ。
水飛沫を蹴りつけながら一定のリズムで繰り出される足下が、何故か清々しく心地よい。