立体交差点

危険な香りをまとった 男だけの酒席にて
胸元に携えた携帯から メール着信音が響く

飛び交う談笑の中 周りを憚りながら覗くと
切ない文字面が 液晶画面に並ぶ

時を見計らって 彼女の元へ
携帯電波の届かぬ 地下の暗がりへ
爆音が鳴り響く 六本木のクラブ

スタンディングバーで ラム・コークを
バースプンに手を伸ばし ライムを搾る
人差し指で氷を転がし 彼女の隣に坐る

 吐息が 重なり合う距離で
 切々と語る 彼女の唇を眺めながら
 時には 視線を絡ませ
 揺れ動く コトバたちを 舐める

ビートに合わせて揺れる 煙草の煙越しに
ダンスフロアで 肢体を くねらせる

笑顔を取り戻した彼女を眺めながら
琥珀色の液体を 胃の腑に流し込む

やがて 閉店を迎え ふたりで散歩
もう自分からは愛さない と窘められ
戸惑いながら 少し面食らう

大きな交差点に差し掛かった

高く聳え立つ ホテルを背に
幾重にも 道路が重なり合う


立体交差点──


ふたり共 地面に坐り込み じゃれ合う
流れるクルマのヘッドライトとテイルランプ
イルミネーションのように ふたりを包む

リングをすべて剥ぎ取られた指に
身軽さと 違和感を覚えながら
モニタ越しに 想いを馳せる──

___ spelt by vincent.