勝手気ままに浮遊しているように見えても、その球体は見えない鎖で繋がれている。
すべての球体を制御・管理しているのは己。
浮遊球体制御室には他に誰も居ない。
無限に拡がるパノラマな部屋。
否、部屋ではない。
辺り一面、水で覆われている。
垣根の無いボーダレスな空間。
無彩色の彩り。
光と、それが生み出す陰翳とでオブジェクトの輪郭を浮かび上がらせる。
トランスルーレントな素材で出来たクリアで硬質な階段。
それらが水面ギリギリの所から幾筋も上空に伸びている。何処に辿り着くのかは見えないが、その階段を登っている人々が何人も見える。水面には、その姿のリフレクションが揺らめいている。
浮遊球体制御室の中央で鎮座しているひとりが、それらの光景を瞑想したまま見詰めている。
本来、確定的要素などひとつもない。
ただ、瞬間刹那、強烈な「思い込み」が浮上し、「それ」を確定的要素に押し上げる。
そもそも何も無い。
何かあると思い込む強烈な勘違い──これが我々を生かし続ける原動力。
常日頃から僕にはそう思えてならない。