早川書房
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あの1文を語らせるために
スーパーマン
マーロウのかっこよさ
村上春樹訳が出ているが清水俊二訳で十分
誰が誰であろうが、
成り代わることは、
決してできない。
決して出来はしないが…
僕は君で、
君は僕なんだ。
矛盾を抱くとは、そう云うこと。
代替えの利かない魂と、
痩せこけた魂の器を携えて…
絶望的な心地好さの海を泳ぐ。
中ジョッキ
黄金色の液体
白い飛沫が音もなく弾ける
ロック・グラス
琥珀色の液体
芳醇な馨りが馥郁と立つ
グラスを重ねる
幾杯も 幾杯も
それでも 潤わない
喉の渇きは癒えるが
心の渇きは癒えない
虚空に浮かぶ
見えない輪郭
慈しむように
指先で
丁寧に ゆっくりと
背中を丸めて紫煙を燻らす
瞼を閉じれば
煙が眼に滲みることはない
汚れを知らぬ者には真の浄化は有り得ない。
醜さを知らねば真の美しさには到達しない。
苦悩は必然。
厭なら降りれば良いだけ。
真の苦しみを知って、真の喜びを得られる。
表裏一体と矛盾の必然。
タフじゃなければ生きては行けない。
優しくなければ生きてる意味がない。
*脳内浮遊物を繋ぎ止めるものとして
黙して語らず。
沈黙こそ最も雄弁かつ饒舌である。
深淵は到達した者のみ
触れ、感じることができる。
我が魂の命ずるままに──。
某日、偉大なる皇帝は深く思い悩んでいた。
近年稀に見る絶不調に見舞われ、皇帝の思惑通りに統治することが困難を極めていたからだ。
彼は、この世に生を授かった瞬間刹那から、この世にある一切の万物を須らく統治すべし、と云う平民には到達し得ない重責を背負っている。
この絶不調が長引けば、万物の存続はおろか、皇帝自らの統治能力に疑問あり、と叩かれても致し方ない。
そのような事態を避けるべく、やはり、流石は偉大なる皇帝である。平民の不満なりに耳を傾けようと云う方策に至った。
これは保身の考えから端を発した方策ではない。万物を統治せねばならぬ皇帝の苦悩が、物語を綴る小生などには及びもつかぬほど高次元の問題であろうことは想像に難くない。
飽くまで、推測の域を出ていないが「慈愛」──この言葉が脳裏をよぎる。
無限に広がる大宇宙のような寛容さと深遠さとが彼を衝き動かしたに違いない。まさしく、感涙である。偉大なる皇帝に燃えるような情熱の真っ赤な薔薇を…☆
僕は、くすぐるのが好きだ。
某西武新宿線駅前付近にある居酒屋でのこと。僕は大抵ひとりでぶらりと立ち寄るのだが、ここのお店の方々には大変お世話になっている。
「あぁ〜vincent.さん来たぁ〜おかえりなさ〜い」
僕はフツーに「おかえりなさい」に弱い。自宅を一歩出たら、ハード・プロテクトが体躯を覆う。ちゃらんぽらんに気を抜いているように装ってはいるが、内面のスタンスの在り方が何処にあるのか。僕だけは欺けない。自分に嘘はつけない。
それが瞬殺で崩壊するのだ。眉が八の字になり口許が綻ぶ。
「vincent.さんはカウンター?」
「うん。ひとりやしねぃ」
じゃ、と云ってママンが席を立つ。そこですかさず僕がその席に坐る。
「いやぁ〜僕の為に椅子をあっためてくれたんですね? 美しい気遣いだなぁ〜流石、ママン♪」
と、さらりと云ってのける。自然と笑顔が向けられる。
僕は何もしていない。
ただ、ポテンシャルの扉を開けただけ。
鍵は、もともと君のものだったのさ。
ただ、それに今まで気付かなかっただけ。
うっかり、しまい込んで忘れていただけ。
その扉を開けてしまったら、
あとは、なるようになるさ。
や、なるようになるだけさ。
僕は何もしていない…☆