夏の想い出

少し浸ってみる。

僕は想い出は要らない、と云って憚らない。

それはひねくれの感情からではなく、美しい想い出の変貌が哀しいからだ。

それらは経年に依って悉く変貌する。

そのまま凍り付いてしまえば良いのだが、時の刻みは無情にも経過するものであり、進む針を止めることは誰にもできない。

そのとき抱いた感情や交叉するベクトルなりが、あたかも初めから何もなかったかのように──。

薄っぺらな欠片たちがこちらを見て嗤う。

「君、理解力低いね?」

殊更に言い返す気にもならない。

8月10日。

10年一緒に過ごした女の誕生日。
数年前その翌日、彼女は姉のために腎臓移植と云う大手術を受けた。
彼女も夏が嫌いだったのを記憶している。

理由は僕と一緒で、暑いからと云うものと、良い想い出がない、と云う2点。
他にも共通点は幾らでも見つかるだろう。


去年の同日。
今の自宅に移り住んだ。

心なしか厭な予感を抱いたが、やはり、それは的中した。

愛を育むはずだった秘密の隠れ家が未練と延命を望む縋る男の執着心に依って暴かれた。強制退去。結果的に連れ去られた。

ここで矛盾が入り混じるが、望むべくして自発的に連れ去られたのだろうとも感じる。強制退去と云う言い回しを使ったのは僕の心情がそう云わしめただけだ。

掛け替えのない者を失った僕は無機物に想いを託した愚を思い知る。

ただ、それは僕自身の愚かさであって彼女には何の責任もない。

誰よりも健気な彼女は、僕を安心させるために精一杯の嘘をついたのだと感じている。

 フフ、安心なんか望んじゃいないさ…
 僕は君と一緒に居たいだけさ…
 ま。いつでも一緒だがね…


最近、眠りが浅い。
浅いと云うより殆ど寝ていない。特に夏の季節柄、寝付けないのは今に始まったことではないが、今年は特に顕著に感じる。

病気について、いろいろとサイトを調べて廻った。自己判断。──僕は確実に病んでいる。それも、かなりの重症──。
以前から自覚はあるが放置したままだ。

受け売りではないが、ほとんどの症例や症状と符合する。
ただ、心の病だとかに対してセンチメンタルな印象や悲観的な感情はない。

僕は今までの人生の中で関わった人で心の病に罹って居ない人のほうが少ないくらいだ。正直、何とも思わない。

このイカれた世の中で正常だと思い込んでいる人のほうが異常なのだ。身の程知らずも甚だしい、とさえ感じてしまう。


綴ることで精神平定に努める。

うつ病の類いは、勿論、心の病だが、単純に「脳の病気」だ。ドーパミンだの何だのの分泌がうまく機能していないだけだ。僕は、それを薬剤に依って制御したくないだけだ。


今までは正常に機能していたものが、ここ数年で何故うまく機能しなくなり始めたのか。

単純に後遺症だ。

僕は頭蓋を割り、脳を空気に晒した経緯がある。そう云った経験のない者と比較しても何も始まらないことを知っている。そして、それは「お互い様」だと云うことも──。


脈絡がなくなってきたので止める。
僕の脳内では、或る意味、すべてが解決している。

実行に移せないのは、それすらも面倒だからだ。


十代の頃、酔いどれて薄暗い裏道でチンピラに刺されて死亡。と、そんな末路をイメージしたことがあるが、それはそれでチンピラの身を案じてしまう。

僕が居なくなった後のことなど僕にはまるで無関係だが、彼は彼で厭なトラウマを一生引き摺ることになるだろう、と。

「生きる」と云うたったそれだけで、多くの不要な、余計な知恵を身に付けてしまう。

そして、薄汚れてゆく。浄化は有り得ない。


 面倒くせえなぁ…
 絶頂期に消えときゃ良かったぜ…苦笑
 絶頂期っていつよ?
 うるせえなぁ…(´∀`*)


それでも死ねない自分がなお哀しいんだ。

___ spelt by vincent.

コメント (1)

vincent. 2007年8月14日(火) 08:49

何かを待っているのは分かるのだが、
期待していない自分も分かる。

物分かりが良過ぎるってのも、、
それはそれで面倒なものだぜ。。(´∀`*)

ま。なけなし利用したってくれよ☆

そんな感じで♪