親父に鍋を振る舞った。
ガード下の居酒屋。
「今日、お前の母親の誕生日やな」
「あぁ、せやねぃ」
離婚届の証人欄に連ねた自分の名と、相手の男の名が思い浮かんだ。
「親父ィ」
「ん、何やぁ?」
俺はビールをひと口舐めた。
「人生って何やろなぁ」
親父は咥え煙草のまま、
「──何やろねぃ」
目を細め苦笑いと煙を吐いた。
親父はもうすぐ還暦を迎える。
隣りの席にはゴルフバッグをずらりと壁際に並べた社会人1年生くらいの3人がいた。
彼らの上機嫌な赤ら顔に目を細め、苦笑いを浮かべた。