愛をください

「あなたが欲しいものって何?」
「ん? 僕の欲しいもの?」
「ええ。なぁに?」
「返答に困る質問だな…」
「簡単よ。わたしからプレゼントされて嬉しいものよ」
「君から? はて…」

「んもぅ、じれったいわねぇ。分かってるクセに…」
「や、知らないことのほうが多い」
「タイトルにもあるでしょ?」
「ふふ。それを云えばいいのかい?」
「そうよ。意地っ張り」
「意地なんか張っちゃいないさ」
「じゃ、どうして?」

「風が吹けば飛んでゆく」
「──」

「君は僕の大事な人──君からそんな軽いものを貰う訳にはいかない」
「──」

「哀しくなるだけだ」
「…あなたは今まで何を見てきたの?」

「何も見ていない」
「え……?」

「透明な風が吹いていたよ」
「──」

「心地好い欠片が舞っていた」
「心地好い欠片?」

「ああ。身震いするような」
「そう…」

「君にそんな安っぽい欠片を吐かせたくないだけなんだ」
「あなたって…」

「なんて馬鹿な人、かい?」
「や、そうじゃなくて…」
「?」
「綺麗な人」
「お世辞はよせよ。綺麗な人が聞いたら怒り出す」

「いえ、お世辞なんかじゃないわ」
「そう? ありがとう。嘘でも嬉しいよ」
「嘘でもない。本当にそう思うわ」
「思うのは自由さ」


「あなたに欲しいものを訊いておいてアレだけど…」
「うん。どうした?」
「わたしの欲しいものを聴いて欲しいの」
「ああ。いいよ。何だい?」


「あなたの愛をください」


彼は口許に僅かな微笑を浮かべた。

___ spelt by vincent.

コメント (1)

vincent. 2007年8月29日(水) 13:31

「愛しい」と書いて「かなしい」と読む。
彼は「愛」ではなく「哀」を知る男──。

ま。感じ出したいときには、このセンテンスを。。☆

そんな感じで♪