「他力本願の何が悪い?」
出し抜けに、男が咎めた。
「や、それは…」
それを聞いた男が口籠もる。
「溢れる自力も他人が認めねば何も輝かない」
「──」
「だから、俺は願いを込めるのさ」
「願い?」
「ああ、そうさ。ちょうど、夜空を見上げているときと同じ気持ちさ」
「そうか。忘れてたよ……」
「何を?」
「最近は夜空を眺める閑を作っていなかった」
「フフ。甘い自力だ」
「かも知れないな」
「星に願いをって聞いたことあるだろ?」
「ああ。いい響きだ」
「知ってるか?」
「ああ」
「ロマンティストは他力本願なのさ」
そう呟くと、男は星の輝いていない夜空を仰いだ。ロマンティストの吐露を聞かされた男は生憎の曇天に眼を細めた。
剣のような三日月がふたりを見下ろし哀しげに嗤う。