この空間はね。
時間が止まっているんだ。
だから、何も始まらないし、
何も終わらないんだ。
フフ、ちょっと素敵だろ?
ずっと、何ひとつ変わらないんだ、
ずうっとね。
ほら、怖がってないで、こっちおいでよ。
時間の拘束がない心地好い空間さ。
君はそれを味わう権利があるんだ。
え? 誰が決めたのかって?
僕だよ。僕の個人的職権乱用さ。
僕はこの空間の支配者。僕がルールさ。
──と云っても、
僕と君のふたりしか居ないけどね?
ふたりだけのルールさ。守るのは簡単だろ?
さぁ、おいでよ。
何故、そんなに怯えてるんだい?
僕が怖いのかい?
え? 僕が見えない?
声も聞こえないって?
じゃ、僕は一体、誰と喋ってるのさ?
僕が独り言を云ってるだけだって?
そんなことはないよ。僕には君が見える。
君の小刻みに震える肩が見える。
恐怖に怯える瞳が見える。
今にも泣き出しそうだ。
そう、分かったよ。
それでも立ち尽くしたまんまなんだね?
いいよ。
時間が止まっていることを
──証明してあげるよ。
次の瞬間、眩い閃光と共に真っ赤な花吹雪が舞い散り、首と胴が泣き別れた屍が転がった。動かなくなった肉塊の周りに深紅の海が広がる。
ほら、嘘じゃないだろ?
時間は止まってるんだ。
何も始まらないし、何も終わらない。
永遠に──。
夢見るように微笑むと、深紅の海に横たわる永遠を一瞥、興味のなくなった玩具を眺める子供のような瞳だった。
さて、次は誰と遊ぼうかな──?