指先が覚えている

ぼんやりと 煙草を燻らす
左手の中指に嵌められたリングが
鈍い光沢を放つ


 指先が覚えている


愛しい人の 首筋を滑り
うなじを掻き分け
黒髪の狭間から覗く
白い柔肌に浮かぶ 耳を撫でる

唇を寄せ 愛しい人にしか発さない
ふたりだけの暗号を 囁く
魔法を掛けるように

くねる艶めかしい肢体を
両のかいなで抱き寄せる

きつく それでいて
壊してしまわないように

溶け合って
ひとつになってしまうように──

 指先が覚えている


柔らかな唇を そっと なぞり
艶やかに潤った液体を 絡め取る

睫毛と睫毛が触れ合うくらいの至近距離で
互いに映る自分自身の姿を 相手の瞳で映す

我慢し切れなくなった
お互いの唇を 貪るように奪い合う

舌先で転がし 粘液を
喘ぎ声と共に すすり合う


 指先が覚えている

 否

 覚えているのは
 指先だけではない

 全身に落雷を受けたような
 電撃が走る


ぼんやりと 煙草を燻らす
左手の中指に嵌められたリングが
鈍い光沢を放つ

 ゆらゆらと立ち上る紫煙が
 愛しい人の
 アウトラインを 象る


輪廻転生よりも 永続的恒久

___ spelt by vincent.