手作りの紙巻き煙草。
紙をボールペンに巻き、紙の端をペロッと舐めて糊付け。スッとずらして筒状にする。
指先で揉み解した葉を筒の中に落とし込む。
時折、トントンと葉を詰め、細い棒で念入りに詰め込む。
そんな一連の作業を筒の中が満たされるまで繰り返す。
掛かる時間は10分と少し。
満たされた筒の片方を吸い口として丸め、オイルライターで点火。
ゆっくりと喫い込み、ほうと吐き出す。
フィルタで稀釈されていない濃度の高い煙が肺腑に取り込まれ、吐き出された煙はみるみる部屋を汚染してゆく。
短くなった煙草をピンセットで摘み、ギリギリまで喫う。
市販煙草の有り難みが滲みる。
手間暇掛けて作ったものが、ものの1分も保たず灰に変わる。
何も詰まっていない。スカスカだ。
空虚な内面を焼き焦がし、堪らず溢れ出した紫煙は部屋の隅々までゆき渡り、やがて、滲み入るように壁面に呑み込まれてゆく。
快適な独房でのひとコマ──。
どうやら、この独房から釈放されるときが来たようだ。
刑期を終えた囚人の筈なのだが、何故か不思議と喜びはない。
得体の知れないものが、もやもやと胸に立ち込める。
これは「未練」──だろうか。
果てしなく透明な闇の中で
仄黒く煤けた鉱物が
緑色の粘液で溶かされる。
ぶすぶすと燻されながら
厭な臭いを発しながら──。
爛れた内面のおぞましさが
瞼の裏側から脳裏に灼き憑く。