「きっちり見開かれてる。いい眼だ──」
透明な炭酸系飲料が入ったコリンズグラスを片手にした男が満足げに云った。
そんな科白を耳にした男が、ボトル棚に並べられたボトルをぼんやりと眺めながら彼を見るともなしに、「終わりだな。それじゃ何も見えない」と低く呟いた。
満足げだった男が訝しげに眉を顰める。
琥珀色の液体が入ったロックグラスを静かにコースターの上に置いた。視線をロックグラスに落とした男は、氷を指で弄びながら液体を対流させる。
「目一杯だからだ」
「目一杯?」
「そうだ。眼と云うのは閉じてるときがいいんだ」
「?」
「眼は何でも語るからな。きっちり見開かれていたら底が割れる」
「──」
「少し見えないくらいがちょうどいいんだよ、お互いに。余計なものが見えなかったら雑念も湧かない」
男はロックグラスに接吻けすると、瞑想するように静かに両眼を閉じた。
口許に微笑を湛えた男の横顔をしばらく眺めたのち、思い出したようにコリンズグラスに接吻けた。
炭酸の飛沫が細かく弾け、BluesyなBGMに紫煙が揺れる。