レーダー付きの小判鮫

詭弁を弄するから詭弁にひれ伏す。
そして、「因果応報」の理を知る。


自身が咎められたり、不利な形勢になるような状況。不快感や自身の望まない結果・着地点などなど...

それらはすべて「自身の存在」に端を発する。それらを解釈・認識しているのは紛れもなく自身。それらを投げかける他者・環境には一片の責任もない。

自身を消すことは難しいので、その状況から遠ざかる。だが、嫌悪感や不快感、苦手意識などを消し去ることはできない。

潜在意識下でレーダー付きの小判鮫が追尾してくる。

意識しないことが最良の得策だと知りつつも、無意識でいることは非常に困難を極める。

潜在意識下で意識していることは「無意識」とは呼ばない。思考回路が侭成るうちは否が応でも回避不能。

 呪縛。スピリチュアルな拷問──。

凡そ「無我の境地」と云うものは、渺茫たる荒野のように、純然と、臆面もなく、腹の底に居坐っているものなのだろう。

 同じ過ちを繰り返さない。
 同じ失敗を二度と繰り返さない。

ポジティブな思考だと感じられるが、実は何も解決しないだろう。対策を講じていない愚者の戯れ言。現実逃避の骨頂。

同じことを繰り返すのが人間なのだ。
飽きもせず、性懲りもなく...

 一度や二度くらいの失敗がどうしたんだ。

こちらに心動かされる。

 一度あることは二度ある。
 二度あることは三度ある。
 三度あることは......

「失敗を恐れるな」に近いかも知れない。

失敗とは、自身の過信・身の程知らずを痛感すべき絶好の好機。

 「気付き」のタイミング──。

そこから逃避することは、「自身を制御する」からは程遠い。身の程知らずのまま、そのまま何も変化せず、再び...

望まぬメビウス・リングに絡め取られる。
右往左往。狼狽躊躇──非道く低次元だ。

 足らないから失敗するのだ。
 手抜かりがあるから失敗するのだ。
 自信過剰だから失敗するのだ。

自身の括った高ほどあてにならないものはない。軽く見ているから軽く足下を掬われるのだ。

それに気付いたときに何をするか? どうすれば良いのだろう、と云う疑問が浮かぶか? どのようにすればこうならないんだろう、と云う意志が働くか?

果たして、ヒントはその辺りに転がっているように思える。

一度の失敗で諦めるならば、そもそも挑んだ自身を嘲笑すべきだ。ドン・キホーテな自身を自身で嗤う。

可能性のない冒険を「無謀」と呼ぶが、純粋な「真の無謀者」は存在しない。無謀者かぶれに「挑戦」と云うwillは掻き消せないからだ。

真の無謀者は一切の挑戦をしない。勝とうが負けようが、そこに「甲斐」を見出せないからだ。そもそも勝負をしない。


無謀者かぶれを「流離いの夢追い人」と呼ぶ。

彼は一度目の失敗で必ず「何か」を拾い、それを胸の内に格納する。丁寧にラッピングして。それは謀(はかりごと)をする上で重要な手掛かりを得たことになるからだ。
こうして「無謀」と云う、嘲笑のお墨付きは取り除かれる。

無謀ではない。有謀だ。謀をするタイミングと絶好の好機を窺って闇の中で潜伏しているだけさ。虎視眈々と…


『きみの出番じゃないよ。失せな』


潜在意識下で回遊していたレーダー付きの小判鮫が踵を返す。

___ spelt by vincent.