恋愛は呆れるほどに長続きする。
相手を神のように崇め、奉ろうとも、え? こんなこともできないの? 知らないの? 分からないの? 等々、何処かで隙やギャップを見出してしまったりする。
或いは、相手に柔順を貫こうとする余り、屈伏や支配などを求めたりもするが、どうしても絶対的な根拠を据えられなかったりする。
つまり、無条件降伏するには至らない、と云うことだ。
そこで、相手を軽視する、と云う要素を取り入れてみるのはどうだろう。
なるほど、完全無欠の人間などはいないのだから、そうすることには特別な努力も理由も要らない。誰でも簡単にできそうなことだ。
だが、恋い余る故にそう簡単には軽視できないものだ。好きだから、と云う理由が先に立つ。
本来、恋愛に理由はない。感情論の頂点ではあるのだが、絶対的解──答えがない。故に、理解できなくて当然なのだ。
理解できないことで悩む前にどうすればモアベターかを考える。
些細なことでも呆れてしまえば良いのだ。
「ハァ… ったく。ダメだなぁ…」
「そんなじゃお里が知れちゃうよ?」
「いいのよ。わたしが全部やるから」
「あなたには期待してないわ」
尚且つ、
「君にはいつも感心させられるよ」
「あなたにはとても敵わないわ」
相手を神のように崇拝しつつ冷遇し、奴隷のように軽視しつつ優遇する。
この定義に準え言動することにより、お互いの定義の差異──
あなたの云う崇拝とは?
あなたの云う軽視とは?
また、優遇と冷遇とは?
これらの価値観の差異──それぞれの世界観が浮上する。
呆れるとは、価値観を探り合うためのバロメータである。
恋愛は呆れるほどに長続きする。
ほら、また何処かで溜め息が──