蒼焔(そうえん)

「いいか。よく聴け──」

男の低い声が響くと、肩を落とした男が虚ろな眼差しを向けた。

「あ? 何か云いてえことでもあんのか?」

男は不貞腐れた科白に眉を顰める。

「何て面してやがんだ。みっともねえ」
「お前に何が分かるってんだよ」
「ああ。何も分からねえな」
「だったら、余計なご託宣は…」
「いいから。聴けよ」
「ったく。うるせえなぁ…」

「お前の落胆の原因は知らねえが、知ってることもある」
「ほう。何だ?」

「人は感動するために生きてるんだ」
「──!?」

「これだけは何があっても忘れるな──」

男は相手を見据えたまま肩を掴み、そっと微笑を浮かべた。まなじりを決した、その深奥には蒼い焔が滾っていた。

___ spelt by vincent.