前世の記憶

「──哀しいわ」
「何故?」
「分からないわ。けれど、何故か涙が溢れて止まらない」

「それは哀しみじゃない」
「じゃあ一体?」
「心が切れて血が溢れているのさ」

「何故?」
「俺と出逢ってしまったからさ」
「──」
「激しさを察知してしまったんだろう。心は嘘をつかない」


「何故、出逢ってしまったの?」
「取り戻しただけさ」
「何を?」

「前世の記憶を紡いで自分の持ち物を」
「──」

「自分の持ち物は大事にするべきだ。きみはどう思う?」

___ spelt by vincent.