一縷の望み

やはり多くの無駄な寄り道をして来たようだ。

 知ってから苦悩が始まる──。

知らねば苦悩の種子にすらなり得ない。

自分の言葉が胸に突き刺さる。
痛みはない。快感に似た心地よい刺激だ。

無駄の中に美徳を見出す──。

何かを為せば必ず報われる、と云う望みを絶つと、期待を抱いて空転する以上の大きな喜びが逆巻く竜巻のように全身を駆け巡る。

それは自分自身が何かを為したから相手が気付いた、と云う自分自身の「過信=傲慢」ではなく、相手自身が自らのポテンシャルに気付いた、と云う相手自身の「覚醒」。

俺は、その覚醒に立ち会えた喜びをひしひしと噛み締めているのだろう。


「無為」こそ一縷の望み。


「絶望」の矛盾を手に入れたのかも知れない。

そこに「死ぬまで生きる」と云う「当然」の中に在る「不条理・理不尽」を覆す何かが潜んでいるに違いない。

そんな気がする。

やはり、俺が今まで出会ったことのない人だ。純粋さゆえ、傷付くことも多々あろうが、俺が傍にいることを忘れないでくれ。
いつまでも──。


むい ─ゐ【無為】
(名・形動)[文]ナリ
  1. あるがままにして作為しない・こと(さま)。ぶい。
    「─渾沌(こんとん)にして人事少なき世に在(あり)ては/文明論之概略(諭吉)」
    →無為自然
  2. 何もせずぶらぶらしている・こと(さま)。
    「─徒食」「─無策」「毎日を─に過ごす」「─な日常生活」
  3. 〔仏〕因果関係に支配される世界を超えて、絶対に生滅変化することのないもの。すなわち、涅槃(ねはん)・真如(しんによ)といった仏教の絶対的真理のこと。無為法。ぶい。
    ⇔有為(うい)
──にして化(か)す
〔老子〕聖人の偉大な徳は、特に教育を施さなくても自然に人民を教化する。
___ spelt by vincent.