人生山あり谷あり。
現在、グランド・キャニオンと見紛うばかりの険しい谷にいる自分にとって、非常に酷な役回りが巡ってきた。
引導を渡す。
クライアントのリクエストに応えられない、優秀ではない男を切らねばならない。
本質的には、その男の人生の流れなど、自分には微塵も関係ないのだから憂う要素はひとつもないはずだ。
それにも関わらず、息苦しく感じるのは何故だろう。
相対的に考えれば双方のベクトルは正論に違いない。本音を吐けば、自分のポジションとしてどちらにも肩入れできない。否、したくない状況だといえる。
ただ、仰せつかった役回りは何処からどう見ても悪役。
他人の人生に変化をもたらす役回りは、今の自分には、正直、向いていない。
「俺は何様よ?」──そんなクエスチョンが駆け巡る。
だが、その悪役を演じなければならない。
何処ぞの企業の人事部長がリストラを言い渡すときの心境とは?
悪役を演じたとき、その答えがみつかるのかも知れない。