「ルールを知っている奴がルールを破るのと、ルールを知らない奴がルールを破るのとでは──全然、訳が違うんだぜ?」
そう云うと、男は不敵な笑みを浮かべた。
「一体、何のルールの話だ?」
眉間に皺を寄せた男が訝しげに問う。
「ルールはみっつある」
「みっつ」
「善いルールと悪いルール」
「残りは?」
「俺のルールだ」
「ほう、で?」
「悪いがルールを破るのは苦手でね」
「そうか」
「我慢できないのさ、悪く思わんでくれ」
「悪くは思わん。我慢はカラダに毒だし気の毒だ」
ふたりを包む空間が音も立てずに氷結する。