絶対服従の命令を呑ませる話術 - 形勢逆転の秘術

A: 「余計なことは喋らなくていい」
B: 「…と云うと?」

A: 「必要なことだけ喋ってくれ」
B: 「うまい命令だな」

A: 「命令?」
B: 「ああ。禁止を前面に出していない」

A: 「ほう」
B: 「必要を推奨する、うまい言い回しだ」

A: 「おだててるのか?」
B: 「や、解析を述べたまでだ」

A: 「それは良かった。おだては不要だからな」
B: 「きみのテーゼに反する」

A: 「そう云うこと」
B: 「──」

A: 「何故、黙る?」
B: 「何故?」

A: 「ああ。何故だ?」
B: 「不要だからだ」

A: 「──?」
B: 「僕が理解したことを君に伝える必要はない」

A: 「随分、冷たいんだな?」
B: 「冷たい?」

A: 「ああ。ひと言添えても罰は当たるまい」
B: 「罰なんてどうでもいい」

A: 「ふふ。神をも恐れぬ男──」
B: 「それは必要なことか?」

A: 「ん? どちらが?」
B: 「おだてと思しきことを喋ること、神を恐れること──の両方だ」
A: 「ふふ。参ったね… 君にはお手上げだ」

B: 「勝負を挑むからさ」
A: 「勝負?」

B: 「ああ。僕は常勝無敗なんだ」
A: 「えらく威勢がいいね」

B: 「君は君自身が掲げたテーゼも覆す」
A: 「覆しちゃいないさ」

B: 「や、僕に対する感情について喋り過ぎだ」
A: 「そうか?」

B: 「ああ。冷たいだの、威勢がいいだの…」
A: 「ああ。云ったな」

B: 「それは飽くまで君のもの。僕にとっては不要な情報だ」
A: 「ふふ」

B: 「君自身が理解しておれば、それで済む筈だ。違うかい?」
A: 「身も蓋もない…」

男は呆れたように笑った。

B: 「この会話は必要なのか?」
A: 「──」

B: 「必要なことだけ喋ってくれ」

___ spelt by vincent.

コメント (1)

vincent. 2008年3月 1日(土) 01:15

或いは「揚げ足取りの美学」とも呼ぶ。。☆