戯曲「迷惑な話」

「なぁ、神様ってのは小学生か?」
「どうしたんだ? 藪から棒に──」

「好きな子をいじめるだろう? 何故、俺を的に掛けねえんだ?」
「お前は殺しても死なん」

「だとしたら尚更だ」
「安心しろ。お前も的に掛かってるさ」

「だとしたら俺だけにしろよ、辛いじゃねえかよ…」
「頼んでみろよ」

「誰に? 俺がか?」
「ああ。その神様とやらに」

「ハッ。奴は一度だって俺の願いを叶えたことなんざねえよ」
「フフ。お前が願い事? それに随分と嫌われてるんだな」

「好かれようとも思わねえしな」
「やけに毒づくねぃ。お互い気が合ってるようだな」

「そんな唐変木と相思相愛でどうすんだよ…」
「妬けるねぃ」

「のらりくらりと…って、待てよ。 てことは好きな子も嫌いな子も的に掛けんのか?」
「そう云うことになるな」

「身勝手で欲張りな奴だな。気に入らねえ…」
「奴は無欲さ」

「じゃあ、何故?」
「『罰』、さ」

「罰? 何か悪さでもやらかしたのか?」
「フフ、お前の場合は自分の胸に訊いてみろよ」

「相変わらず感じ悪いな… 手前には負けるよ」
「俺は誰とも勝負せんよ。常勝無敗さ」

「ほざけ… ま、俺はさておき。何故、あの子まで? お前も知ってるだろう?」
「ああ。可愛い子だ」

「そうだろう? あの子、良い子だぜ?」
「良い子でも悪い子でも罰は罰なのさ」

「解せねえな…」
「知らないことのほうが多い」

「何が悪いってんだ? 罰ってのは罪を犯したからだろう?」
「敢えて云うならば『存在』」

「存在?」
「ああ。存在自体が迷惑なのさ。居なけりゃプラスもマイナスもない」

「そりゃそうだが。身も蓋もねえな…」
「大概、理不尽なものさ」

「誰が決めたんだ? そんなこと…」
「さぁな。神様とやらにでも訊いてみろよ」

「何処に居るんだ? 問い詰めてやるぜ」
「何処にも居ないさ」

「──!?」
「『存在』していない」

「そうなのか…?」
「ああ。だから、罪を逃れて罰を受けない──」

「汚え奴だな…」
「利口なだけさ」


「迷惑な話だな…」
「迷惑な話だろ?」

___ spelt by vincent.