現人(うつしおみ)

猖獗しょうけつの 色は飽和し ふうわりと
追えど浮遊す 胞子の如く──

せめて密やかに響け 虚蝉の慟哭
人知れず舞い散れ 魂の血飛沫──


うつせみ 【▽空▼蝉】
[補足説明]「うつしおみ(現人)」の転。「うつそみ」とも。「空蝉」は当て字
  1. この世の人。生きている人間。
    「──と思ひし妹が玉かぎるほのかにだにも見えなく思へば/万葉 210」
  2. 人間の生きているこの世。現世。世間。
    「──はもの思(も)ひ繁し/万葉 4189」
  3. 〔「空蝉」「虚蝉」と表記したところから〕蝉のぬけ殻。
    [季]夏。《──を妹が手にせり欲しと思ふ/山口誓子》
    「──の身をかへてける木の下に/源氏(空蝉)」
  4. 蝉。
    「夏は──なきくらし/古今(雑体)」
___ spelt by vincent.