2合徳利の熱燗をすする、社の代表がカウンターに坐っていた。
苦笑を浮かべながら隣の席に着くと、
牽引する側の嘆きと憤りが流れてきた。
憂いの交響曲の滑りが悪くなると、
演奏を終えた奏者はふらりと席を立った。
微笑をたたえながら目配せで見送った。
頭の中に輪郭の曖昧な何かを浮かべてから店を出た。
肩口に食い込む荷物を感じながら、
線路沿いの薄暗い道をしばらく縫う。
広い湯船に浸かり、バブルジェットを背中で受け止めた。
ひとときの恍惚に目を瞑ると、額から水滴が滴り落ちる。
ひと通り躯を濯い清めると、安堵も束の間、
隣にあるコインランドリーへ向かった。
紫の煙を燻らしながら、丸椅子に腰掛けて静かに待った。
何処かで見た光景だな、と郷愁の念にも似た懐かしさを感じたが、
傍らにあった大事なものが足りない。
アロマの芳醇な缶コーヒーで喉の渇きは癒えたが、
胸に押し込められた何かは行き場なく旋回する。
旋回を終えた洗濯機から乾燥機に移した。
ドアの取っ手にバッグを引っ掛け、
近所のコンビニへ向かった。
店内を廻りながらセンチメンタルな海を泳いだ。
進んだ針は誰にも戻せないことに苦笑を浮かべた。
生まれ変わった装いをバッグに詰め直し、
再びアスファルトに靴音を響かせた。
天を仰ぐと、生憎の曇天に覆われた水墨画のような空が拡がる。
輪郭の曖昧な蒼白い月が薄ぼんやりと滲んでいた。
恍惚のムーンライト・シャワーに恋い焦がれ、
牙の抜け落ちていない銀狼は、
瞳の奥に揺るぎない獲物を宿す。
___ spelt by vincent.
狼の背中に翼は生えてないんだよ
飛び立ちたくても切り立った崖に呑まれるだけ。。
だから、月に向かって咆哮するのさ
そんな声が耳を掠めると、
『諦めな。。』
と左腕を宥めすかす。。

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