懈感(かいかん)

口数が少ない分、
物憂げな瞳が多くを語る。

睫毛の隙間から僅かな光が零れ、
精一杯の哀願を訴える。

助けて──。



手を伸ばせば届きそうなのに…
追えば追うほど遠離るようで…

僕は立ち尽くしたまま、
黙って君を見つめている。

君の輪郭が大気に溶けて、
消え入りそうな錯覚を覚える。

それでも手を伸ばせない。
臆病風が冷ややかに嗤う。

そして、長目に吐き出す煙が、
忌々しく視界に絡み付く。


懈怠と精進の狭間に揺蕩う魂。


嗚呼、饑い──。


ひだる・い3【▼饑い】
(形)[文]ク ひだる・し
空腹である。飢えてひもじい。
  • 賢者──・し伊達(だて)寒し
  • この一両日食物(じきもつ)絶えて、せんなく──・く候ふままに〔出典:著聞 19〕
〔補説〕現代語では、西日本を中心とする言い方で共通語としてはあまり用いられない
〔派生〕──げ(形動)──さ(名)
け-たい【×懈怠】
  1. 《近世ごろまでは「けだい」》なまけること。おこたること。怠惰。
    「──の心が生じる」
  2. 仏語。善行を修めるのに積極的でない心の状態。精進(しょうじん)に対していう。
___ spelt by vincent.