中生と生中の差異

中生ちゅうなまください」
「はい。生中なまちゅうですね?」
「や、中生だよ」
「……」

居酒屋でのワンシーン。
店員が注文を復唱するとき、僕は必ずといっていいほど、この問答をする。

これは、お客様の注文した通りに復唱せい、という輩気質やからきしつから生じるものではなく、省略形を使うなら正しい省略形を遣え、という憂慮から生じるものだ。

僕が注文したのは「中生」。
中ジョッキに入った生ビール、の略。
彼が復唱したのは「生中」。
生ビールが入った中ジョッキ。或いは、生ビール(中)、の略。

お分かりいただけるだろうか? 主体が入れ替わっているのだ。

ワインに置き換えると瞬殺氷解する。

「グラスワインください」
「はい。ワイングラスですね?」

誰がわざわざ酒場までやって来て器のほうを注文するだろうか?
ちょっと考えれば分かりそうなものだが、世間の認知度的にはどちらも通用しているので、それほど頓着されない。

或いは、店側の隠語の類い。オーダーを通すときなど、長ったらしい品名などを適宜省略する。その名残りかも知れない。

アイスミルクティー → アイミティー
レモンスカッシュ → レスカ

喫茶店などで耳にしたこれらの昭和臭漂う略語の類いはジェネレーションギャップを差し引いたとしても、多分、目の前で復唱されれば、かなりの違和感を覚える筈なのだが、タイトルの件は、割りとおざなりにされていると感じるのだ。

「じゃあ、お兄さん。大のときは何て云うの?」
「はぁ、『大生』と…」
「可笑しいじゃない。生中に準えるんだったら『生大』じゃないの?」
「いや、それは…」

口籠る店員。

「中生はどこまで行っても中生なんだよ。覚えとけ」

と、こんな講釈も中生1、2杯でどうでもよくなってしまうのだが、他にも引っ掛かるワードや憂うワードなりに被弾するケースは日常茶飯事だ。

奮闘努力、都度絡むべきだろうか?
え、ウザイ? いやぁ~それほどでも(恥苦笑

恥苦笑は、「恥ずかしくて苦笑い」の略。
生中は、「生意気な中学生」の略。

そんな感じで♪

___ spelt by vincent.