ちょっとお尋ねしますが

ミーティングを兼ねた気分悪い昼食を終え、某電化製品量販店へ向かいエアコンを物色。

最安値価格のものを選択し、工事日を設定。
カード精算し、レシートを受け取り、領収書を切るために何たらカウンターへ。

何か不備はないか、細かいことで突かれやしないか、と石橋なんぞ普段は頼まれても叩かないオイラだが、慎重に次ぐ慎重。念には念を…
こーゆーことで気ィ回すのごっつウザイねん…

駅へ向かう帰り道、ガリ勉タイプのメガネを掛けた女の子が、

「ちょっとお尋ねしますが…」

よくもまぁ、オイラのような見た目物騒な輩に声を掛けるものだ。

何やらほにゃらら研究所はドコですかぁ?
ん? 何の研究をしてる所かな?
まぁま、交番あっこにあるから訊いてご覧。スマイル☆

逃げ出すようにそそくさと交番へ走る彼女。
ふ〜ん。気もそぞろなんやねぃ、などと思いながら駅へ。

汽車を待つ君は時計を気にしてる──
せやなしに(苦笑

まぁま、フツーに電車が来るのを待っとったんやけど、ホームの奥の方から上品なおばあさんが足下おぼつかない様子でふらふらと接近してきた。

告られるのか。。?
アホな妄想は特急電車に掻き消されたが。

「ちょっとお尋ねしますが…」

本日、2度目のクエスチョン。
こんな日もあるんやなぁ、と彼女に耳を傾ける。

「今日はお墓参りに行ってきたのですが、渋谷はこの電車でいいのかしら?」

何でも彼女はこの地下鉄に乗るのは初体験だという。
いくつになっても初体験とは、ていすと・おぶ・はにー☆

まぁま、おいといて。。w
オイラも同じ方向だから一緒に行きますか? とナンパ。
彼女、安心したのか訊いてもないこと、あることないこと。まぁま、キャッキャはしゃぎながらオイラに喋くる喋くる。

「まぁ、昔と比べればいろいろ変わりますからねぃ」
などとテキトーに相槌を打っていたが、元々、彼女、駅前一帯の地主さんらしい。
しめた! と何がしめたんか、よー分からんちんやったが、仲良くしといて損なかろう とコンマ何秒の判断力には我ながら脱帽する。
ま、敬老へったくれは関係ナッシングやで?(苦笑

電車が到着し、足が悪いという彼女のためにブラ下がりのみっともない中高年のオッサンに刺激的なアツイ視線と偉そうな科白を投げ掛け、ボディガードばりの大袈裟なジェスチャーで着席させた。

「あぁ、ありがとうございます」

と丁寧な口調でお礼をいう彼女の隣りに坐る中高年のオッサンがオイラに呪いの視線を投げ掛けてきやがるので、舌打ちをしながらアゴをしゃくったった。
慌てて内容もろくすっぽ入って来ないような状態で夢中で週刊誌に釘付けになっていた。視線スライドの極意w

オドレは何を見とんねん! シルバーシートじゃなかろうと黙って席譲るんが礼儀やろ?

アイコンタクト虚しく、オイラの思いは虚空を浮遊。
まぁま、中吊りやら何やらを眺めてるウチに彼女の目的地である渋谷駅に無事到着。

「わざわざご親切にどうも。どうぞお気を付けて…」

お辞儀をしながら降りる彼女を見送りながら会釈した。

どうぞ お気を付けて──

とても美しいコトバだ。
最近、とんとご無沙汰だった配慮のセンテンス。
昼食時とは打って変わって晴れやかな気分になったオイラ。
プラマイ・ゼロを感じる喜び。

などと上の空でいたら乗換駅を乗り過ごすところだったが、何とかギリギリセーフ。都内有数の歓楽街へ。

地下鉄の駅から地上へ上り銀行へ向かう。
通帳記帳を済ませ報告メール。
DoCoMoショップを探して交差点付近でウロウロ。
しばらくしてから通行人を呼び止め、

「ちょっとお尋ねしますが…」


本当の目的地は誰に訊けばいいのだろう。

___ spelt by vincent.