聡明な潔さ

「激しい愛と穏やかな愛──どちらが欲しい?」

老師が慈愛に満ちた眼光で尼僧に問う。

「叶うなら両方とも──」

尼僧が曇りのない澄み切った眸でそう応えると、老師は満足げな笑みを湛え、

「ウム。聡明だ──」

と、呟いた。

「そうでしょうか?」
「ウム。正直で潔い──」


分かつことのできない矛盾を静かに解き明かす。「聡明」とは、こう云うこと。

そして、それを躊躇なく呑むことを「潔い」と呼ぶ。

*2008/07/24 臨海隔離施設にて

___ spelt by vincent.