奇跡の瞳

「君はその瞳に何を映しているんだい?」
「──」

「綺麗なもの? 汚いもの?」
「両方よ」

「そうか。汚いものは厭だね」
「見えてしまうものは仕方ないわ」

「何故、眼を瞑らない?」
「見えなくなるから」

「何が?」
「あなたが──」

「僕はどっち?」
「どっちって?」

「綺麗? 汚い?」
「両方よ」

「そうか」
「汚い部分は余り見えないわ」

「何故?」
「眼を瞑っているから」

「嘘は好き?」
「邪魔なだけだわ」

「そうか」
「あなたは?」

「そんなに知恵は廻らない」
「そんなことはないわ」

「じゃ、何故?」
「何故って?」

「どうして、その瞳で嘘をつくんだい?」
「嘘なんかついてないわ」

「そうか」
「そうよ」

「君の瞳に吸い込まれた僕は嘘じゃない?」
「吸い込んでなんかないわ」

「錯覚?」
「奇跡よ──」

___ spelt by vincent.