引き換え

「何と引き換えにすれば?」
「それを考え給え」

「命では?」
「そんな薄っぺらなものは要らないよ」

「そうですか…」
「そこかしこに掃いて捨てるほどある。うんざりだ」

「ヒントを」
「ウム。手に負えないものだな」

「手に負えないもの?」
「同じことを云わせたいのかね?」

熟考──。

「済みませんが、思い当たるものが…」
「ウム。君は何が欲しいのかね?」
「それがどうにも…」
「では、分からなくて当然だな」

そして、脳細胞がひとつ死滅する。


手に負えないものに手を出すと非常に痛いが、彼は決してやめないだろう。
それは「好奇心」ではなく「求道」。

生の潰えるその瞬間まで。

我が魂の命ずるままに──。

___ spelt by vincent.