退屈な教養

教養のある人は
独りでもうまく時間を過ごす。
今、彼は時間を持て余している。

思い切って教養のある人にインタビュー。

──どうして?

やり過ごしてるだけさ。

──どんな風に?

退屈しないようにあれこれ問題を出すんだ。

──問題を?

ああ。そうだね。

──答えは?

探さない。
見つけたらそこで終わってしまうからね。

──成る程。確かに......
自分で問題を出して自分で答える......
そうして、うまくやり過ごすんですね?

ああ。そうだね。

──ただ、答えを探さないのなら
問題を出す意味が......

ふふ。そうだね。
やり過ごせるが、やり切れない。

──それではうまく時間を
過ごしているとは......

ああ。とても退屈さ。

──しばし沈黙──
 
思い立ったようにインタビュアー。

──難しい問題を出せば、或いは......?

それが一番難しい。

──ありがとうございました。

ふふ。知ってしまうと退屈なものさ。
君はそんな風には感じないかい?


インタビュー終了。


教養のある人のインタビューを終えた彼は時間を持て余している。時間を持て余していると、あれこれ問題が溢れてくる。

 今、彼はとても退屈している。
 今、彼は時間を持て余している。

贅沢な退屈を思い切り満喫している。
肺活量のリミットはとうに振り切っている。

だが、彼はそれに気付いていない。

 彼は無教養だ。
 彼はとても無教養だ。

無教養だと云うことを知ってしまったら?

次回は彼がインタビューを受けるのだろう。


教養のある人は
独りでもうまく時間を過ごす。

教養のある人は
独りでもうまく時間をやり過ごす。

___ spelt by vincent.