14:00頃、起床。
皇帝は、皇族御用達ボトル珈琲を飲みつつ、
昨日、街の職人に焼かせたパンを食す。
17:00頃、緊急招集。
関連諸国の諸要請について、駅前の喫茶店宮殿に於いて
王侯貴族と共に作戦会議。
時間に優雅な我が姫も少し遅れて参加される。
重く垂れ込めた暗雲が払拭され、視界が晴れ渡る。
姫はアイスココアを所望。
ストローを包装紙から取り出される際、お戯れになる。
皇帝と王侯貴族はアイスオレンジティー。
柑橘系の爽快なフレーバーは、姫が来られる前に舌の上で舞っていた。
重要な作戦会議を終えた皇帝は、頭髪造形美を微調整すべく、
駅構内の理髪店へ。
技術料は、1千日本円。
日々の暮らしに齷齪している街のいち理髪職人に対して、
皇帝らしい寛容さを覗かせる。
端麗さに磨きを掛けると、我が統治歓楽領・新宿を視察すべく、
平民にも乗車を許可している専用電車を利用した。
自動改札を抜けると、姫は自身の持っていた乗車券を皇帝に預けた。
姫の忘失が要因で平民に対して皇帝権力を行使せねばならない、
と云う卑劣な策を避けるためにも、安寧を好む皇帝は
自らの懐中深く擁護した。
ほどなく視察目的地に到達すると、
ふたりは駅構内の「PePe」と称する建造物を訪れた。
自動昇降式階段にて各階を移動する。
各階毎に平民なりの工夫がされていた。
その工夫を労う意味でも、心の豊穣さと無邪気さを以って
敢えて便乗する、と云う姫の姿がいじらしい。
そんな類稀なる慈悲の心の舞踊を傍らに、
先刻まで作戦会議を共にしていた王侯貴族より
携帯式電送会話装置へ着伝。
敵国の妨害電波を避けながら進捗報告に耳を傾け、
諸国の戯れ言について威風堂々と応対。
王侯貴族の口元にも安堵の笑みがこぼれる。
生野菜を摂取することを計画されていた姫は、
分離液状ドレッシングのバジル及び和風舞茸を1本ずつ、
視察ついでに入手された。
皇帝と平民の笑顔のためにも自身の健康を気遣われる健気さが
可憐で愛おしい。
姫は、電子式鍵盤ピアノを試奏されるなど、
ひとしきり平民の工夫に便乗していた。
鍵盤の上を繊細な指先が優美に舞う。しばし見とれる皇帝。
姫は、視察以前から平民の子供らの食す「菓子」なる類に
興味を持たれていたようだ。
流石は我が姫である。頭が垂れるほど勤勉だ。
爪の垢を煎じて飲むべきだろう。
姫は、原産国・独逸国「HARIBO」なるグミ状の菓子のうち、
サワーレモンとゴールドベアーの2種。
原産国・豪州国「Skittles」のサワーペグパックなる
ソフトキャンディ菓子を、それぞれ1袋ずつ計3袋入手された。
しばらく視察地をゆったりと散策しながら、
笑顔が眩しい姫との語らいに愉悦する。
散策途上、皇帝は自身の視力と敵国侵攻時の一大事に備え、
遮光用眼鏡を入手した。
目が眩んでいては、軍隊指揮はおろか、姫を窮地から救出困難、
それで何のための皇帝ぞ、との英断からだった。
入手したそれをいち早く装着し、本物のペンギンが居ると云う、
平民に運営管理させている和風居酒屋宮殿を訪れた。
恐らく「コウテイペンギン」であったはずだが、
その辺りの記憶の曖昧さが皇帝らしい統治者の風格である。
平民らの就いている職業に対する不平・不満の類が飛び交う中、
独自の領域空間で歓談に耽るふたりであった。
皇帝は、平民らが囁く蹌踉めきの恋愛講釈などを小耳に挟みながら、
それぞれの価値観を以って銘々が謳歌し給え、と微笑を浮かべた。
発泡性麦酒を2杯ほど馳走させた後、帰路に着こうとするも、
機嫌が上向き掛けた皇帝の粋な計らいにより、
銀玉遊技場へと足を運んだ。
自身の預かり知らぬ平民の画策を看破しようと、
百獣の王・獅子がそうであるように、
遊戯にも全身全霊を傾ける皇帝であった。
盤面に打ち込まれた釘や銀玉の流れを想定しながら、
着席すべき台の選定に余念が無い。
その眼光は、大地を逃げ惑う獲物を
遥か上空から狙う鷹のようでもあった。
皇帝は、姫の着席をも考慮して、
横並びに2席空いている台を選定しようとしていた。
強運の代名詞でもある皇帝らしく、
目論見通りの格好の優良台が目の前に現れた。
皇帝は、懐中から「北斗七星」と云う嗜好品と
Zippo屋に造らせた着火装置を取り出して着席した。
平民のルールに合わせ、5千日本円を銀玉貸出許可券と交換してから、
徐に遊戯を開始した。
その5千日本円は、8千5百日本円として姿を変えた。
常勝無敗。圧倒的な大勝利である。
帰路に着くふたり。
城がある駅前の焼き鳥屋宮殿の様子を窺った。
姫は、この宮殿推奨のきゅうり漬け2人前と
オレンジジュースを所望された。
皇帝は、瓶で運ばれたオレンジジュースを
グラスに移し変えて姫に差し出した。
そして、自身が用意させた発泡性麦酒で乾杯した。
宮殿内で従事する平民に労いの言葉を掛けながら、
再び独自の領域空間で歓談に耽る。
皇帝の寓話に熱心に耳を傾ける姫が健気で愛おしい。
城までの道のりは険しい坂道であったが、
皇帝は、自らの独断と偏見で馬車を召集することを控えていた。
6月14日
皇帝と姫のありふれた1日。
満天の星空に浮かぶ蒼白い月を背に、
ふたりで寄り添って歩いた。


























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